入浴・飲泉の効果と禁忌症【保存版】温泉の効能マニュアル

日本人の心である温泉。

温泉に入ることで「気持ちいい」とか「温まる」とか心地よさを感じることは多々あります。

しかし、実際に入ることで体にとってどんな良い影響があるのでしょうか?

今回は

  • 入浴による温泉の効果
  • 飲むことによる温泉の効果
  • 肌に良い温泉

などについて環境省の定める泉質別適応症の温泉を細かく紹介します。

皮膚病」や「高血圧症」、果ては「痛風」まで!様々な効果のある温泉。

これらに関して困っている方、気になっている方は是非参考にしてみてください。

温泉の効能について

成分による効果(薬理作用)

温泉の含有成分による効果は薬理作用といわれます。

これはいわゆる効能(適応症)として、温泉の作用の中でも特異的で、淡水にはない温泉特有の作用です。

薬理作用には大きく分けて、

①含有成分の経皮吸収によるもの

②飲泉による含有成分の吸収によるもの

があります。

日本では温泉の利用は入浴が中心で、飲泉の習慣はあまりないですが、ヨーロッパでは飲泉が中心だそう。

今回は①入浴による効果②飲泉による効果を泉質別でまとめました。

入浴による効果一覧

泉質別の前に、まずは「すべての温泉(療養泉)に当てはまる浴用の適応症」についてまとめます。

環境省の定める一般的適応症

神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、
くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進

これらが基本的な入浴による効果になります。

続いて泉質ごとの入浴効果を見てみましょう。

泉質浴用の適応症
塩化物泉
(ナトリウム-塩化物泉)
切り傷、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病
炭酸水素塩泉
(ナトリウム-炭酸水素塩泉、カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉)
切り傷、やけど、慢性皮膚病
硫酸塩泉
(ナトリウム-硫酸塩泉、マグネシウム-硫酸塩泉、カルシウム-硫酸塩泉)
動脈硬化症、切り傷、やけど、慢性皮膚病
二酸化炭素泉高血圧症、動脈硬化症、やけど、切り傷
含鉄泉および含銅-鉄泉月経障害
硫黄泉
(硫化水素型は※印が加わる)
慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷、
※糖尿病、※高血圧症、※動脈硬化症
酸性泉および含アルミニウム泉慢性皮膚病
放射能泉痛風、動脈硬化症、高血圧症、慢性胆嚢炎、胆石症、慢性皮膚病、慢性婦人病

ご覧のようになっています。

ここで特に気になる項目としては、「慢性皮膚病」に効果のある泉質。

代表的なものだとアトピー性皮膚炎でしょうか。そういったものに効く泉質が複数見られます。

あとは放射能泉のみ見られる、「痛風」や「胆石症」への効果。これらに困っている方には強い味方になりそうです。

また、含鉄泉および含銅-鉄泉の泉質としては「月経障害」に効果があるようで、特に女性にとってプラスになる泉質と言えそうですね。

飲泉による効果一覧

続いては飲むことによる効果です。やはり温泉は入るものというイメージなので、この内容を見て飲泉も見直すきっかけになれば良いですね。

泉質飲用の適応症
塩化物泉
(ナトリウム-塩化物泉)
慢性消化器病、慢性便秘
炭酸水素塩泉
(ナトリウム-炭酸水素塩泉、カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉)
慢性消化器病、糖尿病、痛風、肝臓病
硫酸塩泉
(ナトリウム-硫酸塩泉、マグネシウム-硫酸塩泉、カルシウム-硫酸塩泉)
慢性胆嚢炎、胆石症、痛風、慢性便秘、肥満症、糖尿病
二酸化炭素泉慢性消化器病、慢性便秘
含鉄泉および含銅-鉄泉貧血
硫黄泉糖尿病、便秘、痛風
酸性泉および含アルミニウム泉慢性消化器病
放射能泉痛風、慢性消化器病、慢性胆嚢炎、胆石症、神経痛、筋肉痛、関節痛

こちらになります。

やはり飲むことによる適応症として多いのが、「慢性消化器病」のようです。

消化器官に疾患がある方は気にしてみてもいいかもしれません。

禁忌症に注意

このように入浴することや飲むことによる体への効果もありますが、同時に入浴を控えなければならない「禁忌症きんきしょう」にも注意が必要です。

こちらも一覧にまとめます。

まずは一般的な禁忌症から。

すべての温泉(療養泉)にあてはまる浴用の禁忌症(一般的禁忌症)

急性疾患(特に熱のある場合)、活動性の結核、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性疾患、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾患
※「悪性腫瘍」および「妊娠中(特に初期と末期)」は平成26年の改定で禁忌症から除外

続いて泉質別の禁忌症を見てみましょう。

まずは浴用から。

泉質浴用の禁忌症
硫黄泉および酸性泉
(硫化水素型は※印が加わる)
皮膚・粘膜の過敏な人、特に光線過敏症の人
※高齢者の皮膚乾燥症

浴用に関して注意が必要なのは「硫黄泉および酸性泉」のみです。

続いて飲用の方も見てみましょう。

泉質飲用の禁忌症
塩化物泉
(ナトリウム-塩化物泉)
腎臓病、高血圧症、その他一般にむくみのあるもの
※甲状腺機能亢進症のときではヨウ素を含有する温泉を禁忌とする
炭酸水素塩泉
(ナトリウム-炭酸水素塩泉、カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉)
ナトリウム-炭酸水素塩泉(重曹泉)は塩化物泉(食塩泉)に準ずる
硫酸塩泉
(ナトリウム-硫酸塩泉、マグネシウム-硫酸塩泉、カルシウム-硫酸塩泉)
下痢のとき
ナトリウム-硫酸塩泉は塩化物泉(食塩泉)に準ずる
二酸化炭素泉下痢のとき
硫黄泉および酸性泉下痢のとき

ご覧のようになっていて、特に「下痢」の場合に控えるべき泉質が複数見られます。

そういった症状がある方はご注意ください。

肌に良い「酸性温泉」と「アルカリ性温泉」

一般的にpHによる違いで決まる「酸性泉」と「アルカリ泉」は、それぞれ肌に良いとされています。

酸性泉には殺菌効果があり、たいていの菌は減菌されるので衛生的であり、塩素殺菌なども不要とされています。

また、傷などがあると肌にピリピリと刺激が走りますが、慢性皮膚炎などに効能があると言われます。

そして皮膚病に効果があり、お肌がツルツルになることから弱酸性の硫黄泉は「美肌の湯」といわれることが多いようです。

対してアルカリ性泉は、肌がぬるぬるして皮膚の古い角質層が取り除かれ、肌がきれいになることから「美白の湯」や「美人の湯」といわれることが多いようです。

このようにどちらの温泉も肌に良い効能を持つという点で、共通の性質を有していることになります。

ただし禁忌症の中にもあったように、硫黄泉や酸性泉に関しては皮膚や粘膜の過敏な人は注意が必要になります。

ちなみにお肌に関する違いは、若返り成分「ORP値」でも異なります。

詳しくはこちらの記事に載ってますので、気になったら見てみてください。

実は体にいい「放射能温泉」

泉質の中でも特殊な放射能温泉は、ラジウムやラドンなど微量の放射性元素を含む温泉

日本が大きな被害を受けた原爆や、2011年に東日本大震災で問題になった原発の汚染水など、放射能というと危険なイメージが根強くあると思います。

ただ適度な量(微弱)ならば体に害はなく、むしろ軽微な放射能の短時間照射は免疫細胞を活性化させるなど、体に良い結果をもたらすといわれています。

これは「放射線ホルミシス効果」とも呼ばれ、米国ミズーリ大学のラッキー教授により見出されたものです。

また、放射能泉には活性酸素を除去する「SOD酵素」老化防止酵素「GPX」を増加させる効果リウマチなどの痛みを和らげる効果もあるとされています。

さらに、放射線による刺激が体内の「HSP」(heart shock protein)の生成を高め、体内の免疫力や抵抗力を向上させる側面もあるそうです。

HSPとは細胞が熱などのストレス条件下にさらされた際に発現が上昇して細胞を保護するタンパク質の一群

このように実は人の体にとって有益な放射線温泉。

有名どころですと、三朝温泉(鳥取県)増富温泉(山梨県)、五頭温泉郷(新潟県)などがあるようです。

まとめ:効能を知り温泉を楽しもう

今回は温泉の効能についてを紹介させてもらいました。

  • 入浴による効果
  • 飲泉による効果
  • 肌に良い温泉「酸性性」「アルカリ性泉
  • 様々な効果のある温泉「放射能温泉

泉質ごとに様々な効果がある温泉、とても面白い世界です。

古くからある温泉の言い伝えでは、人や動物の体が治ったという話が数多くあります。

昔の人も、その温泉の効能について体感していたのかもしれません。

今回の記事で温泉についての魅力が深まり、少しでも楽しめるようになると嬉しく思います!

なお、今回記載した内容も例によって温泉の科学 温泉を10倍楽しむための基礎知識!! という書籍を参考にさせていただきました。

より深く知りたい方はこちらの購入もお勧めです。